静けさと音 その2

以下は青梅商工会議所の会誌、newsおうめNO410からの掲載になります。内容は2011年当時のものです。記事中のお店などで既になくなっているものもありますのでご了承ください。


『青梅音めぐり』

1.風土と音

奈良・京都と青梅での仕事は、市内を隅々まで回る数ヶ月の仕事でした。なんとか雪が降る前に終わらせることができました。
春になり、音で風土を語るという本稿のために京都・奈良に旅行しました。 青梅の音と古都の音を比較したかったからです。

奈良は、奈良盆地の平野にあります。そのため交通騒音などが遠方から届き、それらの音が奈良で聴く音に、 微小ですが付加され、音にふくらみを持たせます。大陸的な音になり、奈良の音の特徴になっています。
一方京都は、三方が山に囲まれているので、遠方からの音が遮断されます。 青梅に似て静けさがあり、クリアです。

清水周辺の路地の音を楽しみ、 大原・嵯峨野では道脇の用水や、寺社の拝殿近くの清めの鉢の水音なども楽しみました。路地の作りを比較してみましょう。

京都の路地は戦乱の歴史の中で何回も町作りが行われ碁盤の目のようです。

青梅ではどうでしょう。 少なくとも青梅宿周辺では戦乱はなかったようです。 明治維新でも幕府軍と政府軍の決戦はあったのですが、戦いは飯能で行われ戦火を逃れました。第二次大戦でも空襲は受けませんでした。

くねくねと曲がり少し歩くと、T字路に突き当たるのが青梅宿周辺の路地の特徴です。 しかし、曲がりくねった見通しの悪さが散策の楽しみを高めます。先に広がる景色への期待を高めます。音に関しても、道の曲りは歩く者を町並みで囲み、静けさと音の響き作り出します。

2.私の好きな路地

① まず七兵衛通りです。

青梅駅を出て西に行ってコンビニの角を右に曲がります。そこからの100mほどが私の好きな七兵衛通りです。見通しの悪い路地裏には素敵なレストランや英稲荷の祠(ほこら)があります。

午前10時の通勤時間過ぎやタ暮れの人気のない路地を晩秋に訪れると、風に運ばれた銀杏の枯葉を踏む快い靴音などが楽しめました。

乾ききった空気の中にカリカリと響き、建物からの反射音は、それらの音を明解にする効果があります。吐息さえ、消え入るまでの微小音まで聞こえるようで、路地裏に唯一人歩く孤独感が漂います。

春にも訪れてみました。繊細な靴音がモヤっとした空気の中に響きます。音に包まれる安心感がうれしい。季節により音や響きも変わるのですね。

② 次は三業通りです。

駅に戻り東に線路伝いに行きます。 道のわずかな曲がりが静けさを作り、味わい深い響きを作っています。

2人ずれと行き交うと話し声があたりに響き、一緒の音空間を共有する気分が素敵です。妖怪本舗の不思議な看板も音を強い印象にします。そこはもうキネマ通りです。 南に歩くと青梅街道に出るので東に歩きます。車の騒音を聴きながら歩き右折して、南に呑竜横丁を下ります。

萩原光男