音環境を理解するための10章 その4

音楽が、オーディオシステムでなくても、手のひらサイズのラジオやスマホでも楽しめてしまうことに、驚くことはありませんか?
大きなスピーカーのオーディオシステムは、低音も高音も伸びています。
しかし音楽を、快いよい音で聞く為には、必ずしも周波数帯域が伸びている必要はありません。
今日は、それを上手く説明した法則がありますので、紹介したいと思います。

それは、「40万の法則」と言います。

これは、音を聞くときの周波数特性に関するもので、次のように使います。
人間の聞き取れることのできる周波数帯域は
低音は20Hz
高音は2000Hzです。
オーディオシステムではここまで出れば必要十分な性能だと言われています。

ところが例えば、小型のスピーカーで、
低音は100 Hzしか出なかったとしても、
高音を4000.Hzまでとすれば、音楽をバランス良く聞くことができる、と言うものです。
これは、再生周波数帯域の上下を掛け算して得られる数値が、400,000(40万)であれば、
バランス良く音楽が聞ける、というものです。

では、実際に計算して確認してみましょう。
本格的なオーディオシステムで理想的な周波数特性が得られる場合は
20(Hz)×20,000(Hz )=400,000(40万)
一方、小型で低音が400 Hzしか出ないスピーカーの場合も
400 (Hz)×1000(Hz)=400,000(40万)

両者は、共に40万となりましたね。
このように、上下の再生周波数を掛け算した値が40万であれば、音楽を心地よく聞くことができるのです。

では、これを実際に音を扱う現場ではどうなっているか確認してみましょう。
AM放送の再生周波数帯域は、
100 Hz〜7500 Hz
とされています。
このAM放送の場合は、低音の再生限界周波数を100Hzとすれば
400000(40万)÷100 Hz=4000 Hz
となり、高音は4000 Hzまで再生すれば十分ということになります。

ここで注意したいのは、不必要に周波数帯域は伸ばさない方が良い、ということを覚えておいてください。
例えば、このAM放送の場合、高い周波数の再生帯域が7500 Hzだからといって、そこまでは再生せず、4000 Hzでまとめた方が良い、とも言えるのです。
ここまで伸ばしてしまうと、高域が強調されてキンキンした音になりがちです。

音楽だけではなく、音に関しては、このように、バランスを取ることはたいへん重要なことなのです。
オーディオの音を調整する為に、
*低音を改善する為に、高音を調整する
*高音を良い音にする為に、低音をいじる
という手法はよく用いられるのです。

ところで、この40万の法則は、音楽だけではなく、日常生活の中でも、色んな応用ができます。
音環境にも、40万の法則は不可欠なのです。
例えば、室内に静けさを求めた場合、カーテンや吸音材で中音・高音を吸音する方法をとります。
それは、決して間違っていないのですが、中高音だけを吸音材すると、物音がモコモコした暗い印象になります。
この対策のためには、低音も、同様に吸音しなくてはいけないのです。

音環境の調整には、必ず、高音を対策したら低音も、低音を対策したら高音も、という配慮が必要なのです。
「音環境に整える」とはこのように上下両方の帯域について配慮し対策することなのです。
ところで、「吸音」に関して、低音も重要、という話をしましたが、高音に対して、低音の吸音は難しいことはご存知でしょうか。

ついでに東京ブラインド工業のアピールをしてしまいますが、当社の吸音・静音は特に低音にも十分配慮することが特徴です。
東京ブラインド工業は「音環境を整えて、より快適な室内へ」をモットーに色んな商品展開をしています。今後、吸音・静音技術の紹介もしていきます。

萩原光男