音環境を理解するための10章 その5

言語により、好まれる室内装飾が変わる、といったことに気付かれたことはありませんか?

アメリカやイギリスのレストランの室内装飾やジャズクラブのステージ、日本のレストランや落語などの寄席のステージの違い等です。

英語と日本語では音の認識の仕方が違います。
英語は子音が重要なので、英語圏の人々の室内は、やや吸音量を多くして子音を明確に聞ける室内が多いようです。
カーペットが敷かれたり、壁面もカーテンを多用したり、とややデッドにする傾向があります。

一方、日本語を話す我々日本人の室内は、伝統的には、障子紙と畳や木材で、高域を反射させて明るい音にする傾向があります。
日本語は、母音が重要な役目を果たす母音系の言語なので吸音のし過ぎは、こもって不明瞭な音になる傾向があるのです。
ですから、ライブな環境にして、音のメリハリが分かるようにします。

そうは言っても、日本も欧米並みに石造りのマンションに住み、室内装飾も洋風にする傾向があり変わってきてはいますが、日本語は母音系で英語は子音系と覚えておくと、室内音響の調整に役に立ちます。

具体的な例を挙げてみましょう。

写真はアメリカのバートランドという有名なジャズクラブですが、床はカーペットが敷かれ、壁面は薄いガーゼのようなクロスが貼られていて、デットです。写真のパネルが何枚も貼られていますが、これは反射パネルとも考えられ、ここで調節していると考えられます。

ここで、演歌歌手の八代亜紀さんがジャズコンサートを行ったライブビデオが、UNIVERSAL MUSIC JAPANの公式YouTubeチャンネルに載っていますので下記からご覧ください。

「八代亜紀ニューヨークジャズクラブ動画」
https://m.youtube.com/watch?v=7CpXX76oNJE

彼女は最初英語でジャズを歌うのですが、最後に演歌「舟唄」を歌っているのが興味深いところです。

彼女の声の聞き取り具合を確認してほしいのですが、英語でジャズを歌うときは、歌声が低音も高音もバランスしているのですが、「舟唄」を歌っていると、モゴモゴして不明瞭です。
ここは、英語のジャズがうまく聞けるように作ってあるので、日本語の歌は、合っていないのです。

このような音環境の違いは、レストランなどでも確認することができます。

では、中国語はどうでしょう。
これに関しては、各言語を構成する、音響的主要帯域が報告されていますので、参考にしてください。

《各言語の主要周波数帯域》

日本語は125~1500 Hz
中国語は500~3000 Hz
英語は  2000Hz以上

中国語の音響的主要帯域は、英語と日本語のほぼ中間なのです。

萩原光男