音環境を理解するための10章 その6

西欧人と日本人の「音感覚の違い」を考える(その1)~

「言葉として虫の声を聞く」日本人

これから何回か、「音の好み」「脳の音のとらえ方」について考えていこうと思います。

表題にあるように、日本人と西欧人は「音」にたいする感じ方、が違うと言われています。
しかし、この個々人の「音」の感じ方、は食事や色彩に好みがあるように、好きな音、嫌いな音、があります。
例えばそれは、男性、女性でも違います。実例を上げてみましょう。
女性は3500Hzの音に敏感で、あまりその周波数の音は好まれないようです。
何故でしょう。それは、幼児の泣き声がこの周波数にあるからです。
人類の進化の過程で子孫を残すことは最も大きな仕事であったために、幼児の泣き声の、この3500Hzという音は人類の、最も感度の高い周波数なのです。耳たぶ周辺もこの音に感度が高い構造にできているのです。
その為に、育児をする女性はこの周波数に感度が高く、敏感で、そのために、嫌いな周波数と言われています。
このように、ヒトにはいろいろな音にたいしてそれぞれ感度が違い、その理由もあるようです。

本題に戻りましょう。
虫の声を、日本人は言語と同じように感じ、西欧人は虫の声を雑音として処理します。
こんな話があります。東京のある大学の教授は海外での学会に唯一人の日本人として参加しました。歓迎会で、教授は各氏が熱弁を振るうあいだも、激しい虫の声に気を取られていた、とのこと。その虫の声のことを同席した欧米からの参加者に聞いたところ、誰も何も聞こえないというのです。何日かの学会のあいだに複数の人に尋ねても、虫の音が聞こえることを理解してくれた人はわずかだったとのことです。
これはどういうことかというと、ヒトの音の情報処理に関して、右脳は音楽脳で音楽や機械音、雑音を、左脳は言語脳と呼ばれ言語の理解や論理や知的な情報処理をします。
虫の声に関しては、日本人は言語脳である左脳で処理して、欧米人は音楽や雑音などと一緒に右脳で処理するのです。
虫の声を言葉として聞くか、ノイズとして聞き流すか、そこにも冒頭の幼児の泣き声のように理由はありそうです。

音に対する感覚の違い、そこにある様々な要素を検討していきましょう。

萩原光男