反射音について その1
今回から3回に分けて、オーディオや音の世界の大きなテーマである「反射音」について考えていきたいと思います。
反射音とは、楽器や人、あるいは自然界にある物体が発した音が様々な物にぶつかって発生する、2次的な音です。
自然界に反射音があることの大切さは、無響室と言われるスピーカー測定用の部屋に入ればわかります。無響室は基本的に反射音が発生しない建築構造になっていて、ここに入ると位置感覚や平衡感覚が崩れてしまい、精神的にも不安定になってしまいます。
耳には音を聞くための鼓膜の他に、三半規管という平衡感覚を司る器官もあって、これらは鼓膜などを含めた「一体化した器官」としても機能しているからです。
音を感じる鼓膜で反射音を捉えることは、日常生活で人が安定した精神状態で生活するためにおおいに役立っています。
「反射音を有効かつ効率的に使って良い音を聴く」をテーマに反射音の世界を尋ねてみましよう。
①車載オーディオで見た奇想天外なスピーカー設置
あるカーオーディオのサウンドコンテストで、奇想天外とも言えるスピーカー取り付けによって素晴らしい高音を聴かせているサウンドシステムに出会いました。
図のように、床に高音域用の3cm口径ぐらいのスピーカーが埋め込んでありました。そうすることで中高音が床面からの反射で車室内一杯に広がり、聴く人を包み込むのです。
ここでポイントなのは、反射の力を借りて高音を効率的に放射することです。
理論的に高音は吸音されやすいので、固定した板などによる反射の助けを得て広く放射されると音響的に効率が良くなります。なるべく平坦で硬い面に取り付けると、高音を吸収しないので効果的です。
水濡れなどの問題があるため、販売する車にスピーカーをこのように取り付けることはできませんが、コンテスト用、あるいはデモ用のプレゼンテーションとしては絶大な効果を出していました。
②普通の部屋で中高音を効率的に拡散する方法
これを私たちの日常生活に生かそうとすると、フローリングなどの平滑な床にラジオやテレビなどの発音源を置くことで、その効果を発揮できます。
床は、出来れば鏡の様に平滑だと良いでしょう。カーペットなどの敷物は吸音するので、敷く面積を少なくして反射音を増やします。少なくともスピーカーの周囲はフローリング剥き出しにしたいところです。
壁の効果を高めるためには、額縁やパネルを貼る、あるいはその数を調節して反射の状況をコントロールする方法が考えられます。
③まとめ
私達の日常生活を音響的に豊かな環境にしようと思ったら、反射音に注目すると良いでしょう。
特に、中高音の量が多いと部屋の明るさを演出します。中高音が少なくて低音が多い、または低音寄りだと落ち着き感は出ますが、その傾向が強くなるとアンダーな暗い雰囲気になります。
今回は、日常生活や車室内の話をしましたが、反射音を研究することはコンサートホールの音質を検討するために生きてきます。あの最高音質と言われる、ムジークフエラインザールの音も分析できるのです。
今回のシリーズでは、そのあたりも触れていきましょう。
萩原光男