音環境を理解するための10章 その8
共感覚①~
音の不思議な世界「音に色がある?色に音がある?」
例えば、音階の、ミの音では黄色を感じ、ラの音では紫を感じる人たちがいます。
楽器の音や、音楽を聞かなくても、色で音を感じて心に音楽が流れたらどんなに素敵でしょう。
音で色を感じる、色で音を感じる世界を「色聴」と言います。
色聴は、共感覚の一種です。
今回は、一部の人が持っている、この「共感覚」についてのお話です。
まず、共感覚とは、視覚、聴感、嗅覚など五感など、ある感覚の刺激によって別の知覚が不随意的に起こる現象のことです。「ひとつの感覚の刺激によって、別の知覚が不随意的に起こる」と定義されています。
上記の音を聴くと色が見えるという「色聴」や、文字を見るとそこにないはずの色が見える「色字」が代表的で、「痛みを感じると色が見える」とか、「何かを味わうと手に形を感じる」といった珍しいケースも確認されています。
海外の研究では2000人に1人、200人に1人という報告もありますが、近年では数十人に1人はいる、という報告もあります。
日本にも、この共感覚を研究している人がいます。
関西学院大学理工学部の長田典子教授です。
長田教授は人間の感性を科学的に研究して、プロダクトデザインやサービスに応用する〝感性工学〟を専門とする一方、自らの経験を踏まえ、これまで共感覚に関するいくつかの論文を発表してきました。
そう、教授は共感覚者なのです。教授は「色字」と「色聴」があるとのこと、共感覚があるのでものを覚えるのに便利だ、といいます。
教授はこんな話もしています。
「ひらがなやアルファベット、数字、それから画数が少なければ漢字にも色を感じます。たとえば『あ』は赤で、『い』は白、『う』は白に近いグレーという具合に、それぞれの文字に色を感じるんです。数字だと、1は白、2はオレンジ、3は水色……と、やはり数によって違う色を感じます。自分の名前にも色があります。『長』は赤、『田』は黄土色、『典』は暗めの赤、『子』は白です」
(ネットhttps://gendai.ismedia.jp/articles/-/55422より掲載)
この共感覚、海外で研究されてきましたが意外と身近な感覚かもしれません。
松尾芭蕉が共感覚者として取り上げられているのです。
イギリスのジョン・ハリソンは彼の著書「共感覚、もっとも奇妙な知覚世界」で芭蕉を共感覚者として彼の俳句を紹介して、日本人の共感覚の世界に踏み込んでいます。
意外に身近な共感覚、次回は日本人と共感覚について書いていきます。
萩原光男