ショパン国際ピアノコンクールに見る、音と音楽の今 その1
今回の音楽
ショパンピアノ協奏曲(ショパン研究所 公式YouTubeチャンネル)
反田恭平さんの第18回ファイナルラウンド演奏曲ライブ版を聴きましょう。2位になった反田さんが弾いているショパンピアノコンチェルトです。
※ショパン国際ピアノコンクールはコロナ禍のため2回延期し、2021年に第18回目のコンクールが行われました。
本エッセイは音について書いています。今回からは、ショパン国際ピアノコンクールよりいくつか話題を拾ってみましょう。
前世紀末に大きな盛り上がりを見せたクラシック音楽とオーディオですが、翳りがみえる昨今です。しかし、このショパン国際コンクールを見ると少しずつ何かが変わり始めているのが分かります。
筆者が注目したのは次の項目です。
- エントリーした演奏家の多彩な出身国
第18回のコンクールでは中国、韓国、日本などの東洋人が多く、クラシック音楽は欧米人の手を離れたのかと思えるほどでした。
動画などで選ばれる予備戦に151人が応募し、会場で行われる一次予選には87人が残りましたが、この87人の内訳を見ると中国人22人、ポーランド人16人、日本人14人、韓国7人、イタリア人6人、アメリカ人4人、その他となっています。
特に中国人と日本人の多さには驚きです。欧米人はもうクラシック音楽には魅力を感じないのでしょうか。
- 大きな話題となった、使用されたピアノ
プロの演奏家が弾く標準的なピアノはスタインウェイです。コンサートホールに設置されているピアノの多くはスタインウェイであり、ピアノ音楽の標準楽器、王者と言ってもいいでしょう。
また、ショパン演奏に関してもスタインウェイで弾くことが基準といえます。このコンテストが行われるショパンの故郷ワルシャワにあるショパン研究所のピアノも、コンテストが行われるコンサートホールの標準ピアノもスタインウェイだからです。
一方、今回の優勝者が使ったピアノはイタリアの新進気鋭のピアノメーカー、ファツィオリが作ったものになります。イタリアの楽器と言えばバイオリンのストラディバリウスが思い浮かびますが、ファツィオリは正にその音を実現。そのピアノを使って優勝したのです。
- ショパン国際コンクールにおける日本の活躍
第18回において日本人が2位と4位に入賞したのも話題ですが、このコンクールでは日本のピアノメーカー、ヤマハとカワイが使われています。その点についても、いずれ触れることができればと思います。
このような興味深い話題が見つけられるショパン国際ピアノコンクールですが、最後に概要について紹介しておきましょう。
このコンクールは1927年に始まり、ショパンの故郷であるポーランドのワルシャワにて行われています。フレデリック・ショパン研究所が5年に一度開催し、会場はワルシャワ・フィルハーモニーホールです。コンクールは演奏だけでなく、ピアノメーカーのコンクールの面もあります。
日本人ではまだ優勝者はいませんが、1965年の第7回で中村紘子さんが4位に、1970年の第8回では内田光子さんが2位になりました。
2021年第18回の反田恭平さんの2位、小林愛実さんの4位入賞も画期的と言えるでしょう。
萩原光男