曲面が作る美しく躍動感のある音

今月はオペラ劇場が関係しているので、モーツァルトのオペラから名曲を聞きましょう。

モーツァルト: 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」:お手をどうぞ二重唱(クラシック音楽レーベル NAXOS JAPAN(ナクソス・ジャパン)公式Youtubeチャンネル)

日本の音と欧米の音の違いを、「平面を多用して作られる日本の建築の文化」と、「室内の天井などに曲面がある欧米の文化」という点に注目して考えています。

今回は、天井など曲面に音がぶつかり反射することによってできる、音の効果について考えていきましょう。

曲面のある空間といってもなかなか身近にはありませんが、例えば道路のトンネルの中を歩いた時遠くから来る車の音がよく聞こえたり、会話をしていて声が大きく聞こえる、小声でも会話ができる、という経験があると思います。

このように音が響きやすく大きくなる効果のある曲面やトンネルなどの中ですが、逆に響きすぎて車の音がうるさく感じられる、車が通り過ぎてもいつまでも響く、音切れが悪い、という面もあります。

一方、平面の音はフラットで普通の音ですが、こちらは広い部屋で壁や天井が遠くにある場合は会話がしにくくなります。

このように、曲面がある空間の音は、

*音が豊かで

*音の反応が良く、

*音が速く感じられます。

反応が良く速い音は躍動感が感じられます。躍動感、ウキウキするような自然に体が動いてしまうような音ですね。

では、このような空間は欧米ではどこにあるかというと、オペラ劇場や教会にあります。

伝統的なオペラ劇場はステージに対して客席が半円形や馬蹄形になっていて、音の豊かさや躍動感があります。

このようなオペラ劇場ではこの効果をさらに増すために、天井がドーム状に曲面になっていて、ステージより低い位置に居るオーケストラの音は天井との間で増幅され、豊かで躍動感ある音になるのです。

ウィーン国立歌劇場内部(曲面で構成されている)

教会はどうでしょう。

ドームあるいはドーモと呼ばれる大きな聖堂に多いのですが、ここで歌われるミサは独唱で一人で歌っても幾重にも響きが重なり合い、豊かな音で祈る人を包み込むなど、聞く人に至福の瞬間を味合わせることができるのです。

西洋では、特に音楽は宗教との結びつきが強く、宗教に利用されることで発展してきました。

その音による音楽の発展に、実は曲面が大きな貢献をしている、と考えるのは楽しいことです。

萩原光男