防音対策についてのお話 その1

環境計量士 N I

現状のコロナ禍ではおうち時間が増えました。私も家で何の気なしにテレビを見ていましたら、最近人気があるものとしてなんと防音室が挙げられていました。ある芸能人が変なもの(防音室)を最近購入したとテレビ番組中で話したところ、周囲の人が防音室のブームが来ているよと反応していました。コロナ禍でおうち時間が多くなり、少しでも静かなところで過ごしたいという要望や、家のなか大声で歌を歌っても楽器を演奏しても隣近所に迷惑をかけたくないとの理由だそうです。ちまたでは結構防音のことも話題になっているように感じました。

私はもう40年以上も防音対策にかかわってきた技術者ですので、このブログをお借りして防音対策について少しお話ししようと思います。内容は数回に分かれており5回くらいで終わらせようと考えています。

さて今回は最初として「防音」という言葉;概念についてお話します。

「防音」は音を防ぐという意味で、音を制御するための機能、技術、材料全部の総称として使用されます。「防音」の機能・材料は、「遮音」「吸音」「制振」「防振」という4つの基本カテゴリーに分類されています。

図は「防音」の内容について機能別の分類を示した図です。

図の①②が音(空気伝播音)に対する機能について示しています。

  • 吸音 (absorption)機能は壁等に入射した音の反射を低減する機能を示しています。反射する音を、壁表面に吸音材を施工することで少なくするというような機能です。
  • 遮音(insulation)機能は壁等に入射した音を反射・減衰させ、壁の裏側に透過する音を低減する機能です。壁に入射し壁の裏に透過する音を少なくするために、壁自体の構造や音響的開口部の処理、遮音材を施工します。そうすることで壁の後ろに抜ける音を少なくします。吸音と遮音は全く正反対の機能ですね。

図の③④は振動(個体伝播音)に対する機能について示しています。

  • 制振(damping)機能は振動のエネルギーを減少させる機能を示します。薄板等の表面に内部損失(振動の吸収性)が優れる鉄板等の制振材を密着施工して同時に振動するようにし、制振材の内部損失を利用して振動減衰を行います。
  • 防振(isolation)機能は制振と同じく振動に対応する機能です。例えばエンジンやモーター、その他の移動時に出る振動が筐体に伝搬しないよう、エンジンを金属やゴム、ばね等で絶縁するようにします。すなわち制振は振動を吸収する機能で、防振は振動を跳ね返す機能です。

さらに図の①③は吸収を、②④は反射を示しています。

音響機能別に使用される対策材料の概要を述べると以下のようになります。

  • 音(空気伝搬音;普通に言う音)のエネルギーを吸収する技術・材料を「吸音材料」といいます。このカテゴリーには壁表面に張られた吸音材としてグラスウールやロックウール、発砲材料等の素材からたとえば吸音パネル、吸音ブラインドが含まれます。壁に入射し跳ね返る音を、壁に設置した吸音材で吸収し反射音を少なくします。
  • 次に音(空気伝搬音;普通に言う音)のエネルギーを反射、遮蔽させる技術・材料を「遮音材料」といいます、このカテゴリーには壁本体、遮音シート(ゴム系、塩ビ系、金属系等)、さらに耳栓等の構造・材料があります。

具体的な一般名称では、代表的な吸音材はグラスウールやロックウール、遮音材はゴムシートや石膏ボード等です。これらは全く違います。お客様から防音材くださいと言われ、どう対応したらよいか困ることがあります。

  • 振動(個体伝搬音)に対しては、振動を吸収する機能を持ったものを「制振材料」といいます。このジャンルにはゴム系、アスファルト系の(制振)シート材があり、対象物(多くの場合は金属薄板)に密着施工され、対象物と一緒に加振され、制振材の大きな内部損失を利用し振動を減衰(吸収)します。
  • 振動(個体伝搬音)に対して、振動を跳ね返す機能を持ったものを「防振材料」といいます。このジャンルにはエンジンマウント材(ばね等)、防振ゴム等があります。

振動エネルギーを吸収する技術が「制振」で、振動エネルギーを反射、遮蔽させる技術が「防振」となります

一般的な騒音対策は、上記4種類の機能を持つ材料・構造を組み合わせ、効率的に騒音の低減を目指します。

次の回からは防音と称される4個の機能・材料の内、吸音機能・材料についてお話ししたいと思います。

以上