昨今の音感覚の世界と製品作り その3

音空間の理解につながる歌謡曲の世界と筆者が感じた「宇多田ショック」

今回の音楽 【パプリカ】ダンス ミュージックビデオ | Foorin×米津玄師 | NHKより

2018年にリリースされた楽曲でレコード大賞も受賞した、子供から大人まで楽しめるダンスミュージックとして社会現象になった曲です。
このリズム、ドラムのビートは宇多田ヒカルさんの「Automatic」と類似の感覚があります。

前回は、昨今の市場のメジャーな消費者Z・Y世代を確認して、音楽の面から彼らの嗜好やトレンドを紹介するためにヒップホップ系の曲を紹介しました。筆者が現役時代インパクトを感じた、宇多田ヒカルさんのミリオンセラーになった曲「Automatic」です。

皆さんはこの曲を聴いてどう感じたでしょうか。
1998年(平成10年)に発売された曲です。少なくとも団塊世代などの「昭和」とは随分変わっています。変化のポイントをあげてみましょう。

  1. リズムが明確で、ヒップホップ系と言われるジャンル
  2. 歌詞も重要だが、曲作りにリズム・メロディーが優先され、メロディーから作られている
  3. リズムを刻むドラムは、コンピュータが活躍するいわゆる打ち込み系で、メカニカルな印象

曲の冒頭、打ち込みのドドドドと言う身体に響くようなドラムの音で始まります。

曲全体についてはいろいろ感じるところがありますが、筆者としてはこの冒頭だけで時代の音を感じてしまいます。
ヒットチャートのトップの曲で、ダンス系で激しい低音で迫ってくる、というのはそれまでなかったのです。

前回お話ししたZ・Y世代の求める音楽にはこのような傾向の曲があります。また、音についても、打ち込み系の無機的ではあるけれどもそのリズムに身体を動かされるような傾向である、と言えるでしょう。
付け加えるなら、すでにこの傾向は安室奈美恵さん(1992年メジャーデビュー)あたりからも出ていました。その後エグザイルなどに繋がっていて、最近の曲はこうした楽曲がメインになっています。

勿論これが全てではなく、Z・Y世代の人達は多様性が信条ですから生楽器のアコースティックな曲や音も受け入れるわけですが、すでに昭和的な演歌はマイナーになっていますし、ニューミュージックと言われた曲なども今では多様性の中の一つのジャンルです。
上記のように今の流行歌は歌詞よりも先に曲が作られる傾向になっていて、リズム、ビート、音志向になっていることは知っておいた方が良いでしょう。

このような時代の流れの捉え方として、感覚の世界やアコースティックな雰囲気の捉え方から情緒的とか機械的・無機的という言い方もありますが、筆者は時代の「気分」と表現する方が好きです。

朝起きたとき、ひとりでいるとき、友達といるときなど、その日そのときの「気分」を作る周りの諸々の事象と捉えたいと思っています。

この「気分」的な私達の日々の心持ちが、ハードな建築物・室内装飾やソフトな流行歌などの音の世界でどう作られるか、そんなことを考えて身辺の環境を整えていきたいと思います。

さて、「Automatic」という曲の低音で大きなインパクトを与えてくれた宇多田さんですが、宇多田ヒカルさん自身の生き方もまさにグローバルで時代を象徴しています。多国籍で、日本とアメリカで活躍している彼女は、まさに現代的な生き方と言えるでしょう。
彼女の母親は演歌歌手の藤圭子さんで、父親も音楽関係の人です。当時東京とニューヨークを行き来していたことからニューヨーク生まれで、日米の二重国籍を所有していると思われます。

次回は、このようなトレンディな音傾向が、建築構造などとともにどう変わってきたか、どこへ行こうとしているのか、を考えていきましょう。

萩原光男

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