昨今の音感覚の世界と製品作り その4

今回の音楽 ライオネルリッチ "ユーアー"(You are)1982年

少し古いですが、アメリカのポップスにはこんな曲もあります。黒人系のR&Bの曲です。

米英ではR&Bは根強い人気があり、ビートルズも影響を受けています。この曲を聴くと特に低音の感覚などは宇多田さんの曲と通じるものがあり、アメリカンポップスの影響を受けていることを感じます。

・日本人の音感覚を、流行歌や建築構造から考察する

2回にわたって、消費中心世代の変化を見ながら世の中のトレンドや気分といったものを考えてきました。
今回はそういった今日的な状況に対して、日本人の音感覚はどうなっているかを見ていきたいと思います。伝統的な日本の感覚との関係を「音」、それも「低音」を中心に考察していきましょう。

筆者がオーディオの会社に入って音の仕事を始めた1970年代は、日本人と欧米人の低音感覚には大きな違いがあると言われていました。石造りの建物で生活する欧米の人々と、木と紙でできている家に住んでいる日本人の音感覚の違いです。
前回、前々回と論じてきたのは平成以降の出来事ですが、伝統的な日本人の感覚というと昭和的感覚でしょうか。主に団塊の世代と言われる、私なども含めた人達の感覚です。

しかし、最近は「音感覚の違い」と言って、日本人と欧米人を分けて話すことはないように思います。

宇多田ショックで触れたように、 その頃から流行歌はヒップホップ系の影響を受けて演歌などの音とは変わっていきました。
だからと言って昭和の音を否定するわけではなく、団塊の世代は老いたとは言えまだまだ日本人の多くを占めており、消費活動は低調でも存在感は低くありません。要するに、多様化の時代なのでしょうか。その辺り Y・Z世代は多様性の感覚の中で高いレベルで理解しているようです。

このような音感覚を考慮しつつ、昨今の日本の音環境についてはどう考えていったら良いでしょうか。

昭和の伝統的な日本人の感覚として触れた木と紙でできた家屋の音ですが、現在では全く異なっていて欧米化していると言えます。
コンクリート造りのマンションが次々と造られていることもありますし、木造建築でも防寒のため密閉度の高いサッシの窓などになっていてさらに壁には防音材がたくさん入っています。また、耐震性を高めるためにマンションを始め建築物は高強度設計になっています。それが静音にも大きく貢献しているのです。
日本の建築構造は進化しており、宇多田ヒカルさんのAutomaticの低音を聴いても隣の部屋からクレームが来ないようになってきていると言えるでしょう。

建築というハードが音楽というソフトに耐えられるようになってきて、音文化が出来上がっているという捉え方もあります。建築構造が流行歌を変えたとは言えませんが、近年の住宅がヒップホップ系の音楽でも楽しめるような建築になっている点は注目すべきです。
日本人の音感覚の変化とそれを許容する建築構造や室内装飾、住人のより快適な生活というのは音環境ビジネスにおいて大きな視点と言えます。

萩原光男

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