防音対策についてのお話 その5

環境計量士 N I

今回は “防振”についてお話します。

吸音、遮音、制振対策は一般的な防音対策としてよく取り上げられますが、防振対策という言葉・機能はあまり知られていないようです。防振対策は、振動源と振動を伝えたくない部分(床や構造物、周辺設備など)との間にバネやゴムなどの弾性体を入れることによって、振動の伝わり具合を小さくする技術です。
例えば、機械など振動を発生しているものを床に直接置くと、振動がそのまま伝わってしまいます。弾性体を間に挟みやわらかく支えることで、床に伝わる振動を小さくする効果があります。音源(振動源)のすぐ近くで使用され、どちらかというと音が広がらないようにする音源対策です。
防振対策が使用される場所としては、エアコン室外機のコンプレッサのゴム部品、モーターの取り付け部、車のエンジンのマウント、建築関係では釣り天井の保持部分などがあります。材質としてはゴムや金属ばねが多く用いられています。

(1)防振対策とは
一般的に防音対策は下図に示す4つの機能を持つ材料や構造を組み合わせ、効率的に防音対策を行っています。①の吸音と②の遮音はいわゆる音(空気伝搬音)ついての機能です。③の制振と④の防振は振動(個体伝搬音)についての機能です。
今回取り上げた『防振』は振動(個体伝搬音)についての機能です。赤丸で囲った下図の④に示しているように振動に対する遮蔽・反射する構造を示しています(音に対する遮蔽・反射は遮音でしたが)。すなわち防振性材料(板)の付加により板の振動が遮断反射され、外への振動が減衰し、発生音を少なくするという機能です。

図-1 防音対策のカテゴリー(機能別)

 

防振ゴム例

(2)制振材の性能の表示
 機械など振動が発生する機器の防振基礎の防振効果を表す量として、振動伝搬率が用いられています。
右図は金属スプリング、ゴムを用いた防振系の振動伝達率を示したもので、防振効果は防振系の共振周波数の約3倍以上の周波数領域で生じます。

(3)防振構造の実態
【機械防音】
防振材料としては防振ゴムが現在広く用いられています。防振ゴムには種々の形、大きさがあります。その設定の要点を挙げると、加振源の周波数の1/3以下の共振周波数になるように一個当たりの荷重から必要とするばね乗数を求め、一方において許容荷重の制限内でゴムの種類を選定します。最近では、回転数の低い機械については金属スプリングの使用が多くなってきています。
【建築関係:部屋の防音】
部屋全体の防振にも防振材料のゴムが使用されています。例えば録音スタジオの浮き構造の例が挙げられます。さらに最近では地下鉄振動の遮断にホール全体を浮き床構造にする例もあります。一般住宅では床衝撃音の軽減策としてグラスウール、ロックウールを床下に挿入する等の工法が主として集合住宅に用いられています。

(4)最後に
建物の内部に侵入した騒音には、人の声、テレビの音等のほかに機械の運転音、歩行音、水流音などがあります。機械の運転音、歩行音、水流音などの振動を伴う音は少し離れた場所でも聞こえてくるので気になる音となります。これらの現象は構造体に振動が伝わり、それが再び音となって放射されるためです。これを個体伝搬音と言い、対策には防振対策が有効です。防振対策はうまく使用すると少ないコストで大きな効果を出せます。また、ケースによりますが低周波数の音を消せること等があり、有効な対策となります。

五回の連載で、防音対策並びに防音対策を構成する4種類の機能材料についてすべてお話ししました。一般的な防音対策は4種類(吸音、遮音、制振、防振)の材料を使用して行います。どれを使うかの選択、適用は複雑ですが、専門家等の意見を考慮しながらより効率的に最大の効果が出る防音仕様を作成するのが良いと思います。
私が書いた防音対策についての話が、少しでも皆様の参考になれば幸いです。