西洋の巨大建築物と空間音の捉え方 その1

今回の音楽

オルガンの宗教音楽です。長い残響の行方を聞いてみて下さい。

YouTube パイプオルガン ドボルザークの宗教曲「スターバト・マーテル」合唱作品、オルガニスト 長井浩美 → https://m.youtube.com/watch?v=Z0ZfgxWulsw


1、西洋と日本では建築物の大きさが違う

今回と次回は、西洋と日本で異なる空間音の捉え方について考えていきます。

西洋では、古代から巨大な建築が作られてきました。巨大建築物というとまず古代ギリシャの建築物、メトロポリスを思い浮かべるでしょう。円柱の何本もの柱で支えられた高い天井、その下に広がる広大な空間があります。

西欧では古代にこうした建築物があって、その後の教会建築でもイギリスのセントポール大聖堂をはじめ、ドイツといった国々にもドームなど高い天井と広大な空間の建築物があります。

それに対して、日本や東洋の建築物というと、広さはあるにしても高さはそれほどでもありません。

西洋と東洋では、建築物やそこにできる空間の違いが確かにあります。

西洋が高さ広さ共に巨大な建造物を志向するのは、権力や神々の偉大さをその建造物で表現し、為政者が民衆の上に立つための方法論なのでしようか。

ギリシャやイタリア、ロンドン市内で見られるライオンや偉人の立像などもこうした権力の誇示だ、とは現地観光地ガイドの言葉です。

筆者は仕事として、人生のほとんどを西洋の音と日本の音の違いを考えながら生きてきたのですが、こうした建造物に見られる視覚上の違いが音の世界にも大きく現れている、と考えるようになりました。

西洋の音と日本の音の違いは低音にある、というのは通説です。

筆者はカーオーディオ技術者として取り組んでいましたが、所属していたオーディオ会社が作るホームオーディオではなかなか西洋で評価される低音ができずに苦労していました。

日本人には分かりにくい西洋人の低音、これは私の会社だけでなく、全日本の長年の課題でしょう。

西洋人は日常的に接して生活してきたので、巨大空間がある建築物の作り出す音楽や音感覚が脳内に染み付いているのに対して、日本人にとってこうした空間との付き合いはわずかな時間しかないのですから。

とは言え、日本人の居住空間はコンクリートのマンションになり、コンサートホールで音楽を聞くのも日常的になってきています。その結果、日本人の作るオーディオ、楽器、コーサートホールに関して、少しずつ西洋人にも受け入れられるようになってきた感はあります。

それでも依然として存在する低音理解の違いですが、ここでは低音理解を音や音楽の雰囲気をつくる空間効果、と言い換えて理解していきましょう。

最近、海外のピアノメーカーに勤める日本人調律師から、決定的な日本人と西洋人の音の捉え方の違いを聞きました。彼が言うには、日本人の調律師は音の立ち上がりを聞く。それに対して、西洋人は音を時間で聞く、とのことです。

音を時間で聞く、とは、発音された音から消え入るまでの音の消息を辿る聞き方、それが西洋人の音の聞き方だというのです。

確かに、音というと発音された瞬間の音質音色を論じがちですが、これを雰囲気とか空気感・響き、アンビエンスというと、音の発生から終息までの概念になっていきます。

次回はこのような音の捉え方についてアプローチしましょう。