防音対策についてのお話 その2

環境計量士 N I

最近、ファミリーレストランに行ってきました。大きな道に沿ったところにあり便利で、メニューもいろいろありにぎわっていました。ただ、私としては職業柄かもしれませんがざわざわした空間で落ち着きません。このざわつきの原因は、大空間でありながら室内の吸音性(音を吸収する材料)が少ないこと等が原因です。

郊外型ショッピングモールの通路なども結構ライブです。室の音響状態は人の感情に影響を与えるものです。シッピングモールの内部(通路等)をライブ(吸音材が少ない)状態にしているのは、来場者を興奮させてたくさん買い物をしていただくようにしているのかもしれません(あくまで個人の感想です)。

落ち着いて作業を行うことが求められる場所、オフィス、病院、学校等にはデッド(吸音材がたくさんある状態)な音環境が望ましいと思います。

さて前回のブログでお話しした通り、今回は「防音」を構成する4種類の機能・材料の内で「吸音」についてお話しします。

吸音(absorption)機能は、壁等に入射した音の反射を低減する機能を示しています。壁に入射し反射する音を、壁表面に材料(吸音材)を施工することで少なくするというような機能です。代表的な材料としてはグラスウール、ロックウール、フェルト等があります。

まず機能面からお話しします。
吸音は空気伝搬音に対する概念です。声等の音が壁等にぶつかった後反射しますが、その反射音を少なくするような機能です。
図で示すと下記のようになります。吸音材がない場合は壁等(反射性の材料でできていると仮定)に入射した音は100%反射されますが、壁の鏡面に吸音機能を持った材料を施工することにより反射音を減らすことができるようになります(例えば0.9の吸音性を示す材料の場合は0.1だけが返ってくる)。

このような材料を吸音材といいます。

では壁等に吸音材を張った場合はその空間ではどのような効果があるのでしょうか。
吸音性のない部屋では音が反射されるため、離れた聞き手に音が重なって届くので、聞き手はとても不快です。一般のオフィスでは電話の声が聞き取りにくい等の弊害があります。

壁、天井等に吸音性を持つ材料を張った場合はどうなるでしょうか。 学校の教室・オフィス・会議室などの空間では、適切な吸音効果を有する環境にすることで、話し手は話しやすく、聞き手は話し手の声を明瞭に聞くことができます。

快適な音環境を実現するためには、室内に適切な吸音性があることが重要です。
吸音材のありなしを比較できる音ファイルがありますので、聞いてみてください。
床寸法が3m×4mで高さが2.5m程度の部屋ですが、壁天井はコンクリートや石膏ボードで作られており、ほとんど吸音性はありません。その部屋の中に吸音材(今回の場合は壁貼パネル900×900;東京ブラインド工業製)を1枚ずつ最大14枚入れた時の音の変化を示します。

吸音パネル 0枚

吸音パネル 1枚

吸音パネル 2枚

吸音パネル 3枚

吸音パネル 4枚

吸音パネル 5枚

吸音パネル 6枚

吸音パネル 7枚

吸音パネル 8枚

吸音パネル 9枚

吸音パネル 10枚

吸音パネル 11枚

吸音パネル 12枚

吸音パネル 13枚

吸音パネル 14枚

また吸音材は施工する場所によって効果が異なる場合があります。

上の図は音楽を聴く部屋の例ですが、音源(この場合は2個のスピーカー)から受音点(人物)までの音の経路を想像し、特に一次反射音が大きそうな場所に吸音材を施工すると効果的です。これと同じことが最近ではWEB会議に使うPAシステムにも言えます。WEB会議のPAシステムのスピーカーからの音線を考慮し、特に(マイク位置への)1次反射の部分に吸音材を施工することによりハレーションの予防に効果的です。

吸音材というと防音材料の中で一番よく知られているもの(防音材で)ですが吸音の性質を理解して適切に使用することにより快適な音環境を実現するのに有効な材料です。