コンサートホールの音を、古代コロセウムの音響効果に学ぶ

今回聞いてみてほしい音楽は石造りの教会に響き渡る歌声、ミサ曲です。クリアで長い残響時間の響きは石造りゆえの美しさです。

YouTubeなどにミサ曲集がありますので聞いてみてください。

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コンサートホールの音響設計の重要項目に、ステージ上の微小な音も最後尾の客席まで届ける、というのがあります。

この音響設計は既に古代ギリシャやローマの劇場、コロセウムで実現していました。

コロセウムの形状は図のようにすり鉢状ですが、この巨大コロセウムのステージでは、小さな音でも最上段の席まで届くのです。

この形式の劇場は紀元前500年ごろには作られていました。最初は丘の斜面を削って作っていたのですが、古代ローマ時代には街中に造られました。

ローマ時代には、労働は奴隷達が行なったので、為政者は一般市民には娯楽を提供して余暇を過ごさせたのはよく知られています。

ここで演劇をおこなったり、闘技場として死闘が繰り広げられ、市民が楽しんだのでした。

現代の音楽専用に設計されたコンサートホールでも、ステージ上での微小な音が最奥の客席まで届くように設計されています。観客が入ると、人々が吸音材になってその効果は薄れますが、空席のコンサートホールのステージでは、床に落としたピンの音さえもホール最奥にも聞こえるように設計されます。出来上がったコンサートホールの、一つの音チェック方法です。

※サントリーホール

コンサートホールの形状には、ホール全体が直方体になっているシューボックス型があります。伝統的な形状のシューボックス型は昔から作られていて、有名なホールがたくさんあります。

ワインヤード型コンサートホールは、形状的にコロセウムに似てすり鉢型をしており、最近多く作られています。ワインヤード型は1963年に作られたベルリンフィルハーモニーホールが最初で、サントリーホールもこの形式です。

これらのホールの成功事例から最近多く作られるようになっていますが、その理由は、この古代からの音響に立ち戻っているのかもしれません。

萩原光男