素材の「音」に拘る(1)素材の音・響きにも高級感や品位がある

日々の営みの中で、気の利いた喫茶店やレストランでお茶を飲んだり食事をする時に、音がその場の雰囲気を作っていると気がつくことがあります。
テーブルの材質、壁の仕上げ、そこで使われているカップやソーサーなどの食器でも作られます。

その音は、高価なものほど雰囲気があるようにも思えてしまいます。
心の持ちようなど、メンタルも影響しているのでしょうか。

「音のエッセイ」もこれから何回か、身の回りの素材や物の音、製品の音などについて考えていきます。

いつもは気にしていなくても、「音」と言って注目すると、今までに出会った素敵な音、素敵な人生のシーンを思い出すことがあります。
10年20年という単位では、新婚、子育てなどのシーンで「音」が変わったり、世の中で私達の生活スタイルが和風からすっかり洋風になったことで変わったことに気づきます。

人に好まれる音、憧れる音、癒しの音があります。

それは音楽で好まれる音と似ています。
木質の楽器の柔らかい音は、自然を感じさせ気持ちを落ち着かせてゆったりした気分になります。
銀のフルートなどの明るい華やかな音は、あたかも宮廷での優雅な舞踏会や来賓を迎える雰囲気があったりします。

このように、ものづくりの世界は素材の世界です。
高級で高価な素材、華やかで皆が憧れる素材、そう言った高い品位で私たちを魅了する音の素材があります。
そんな話をしていきましょう。

今回紹介するのは、ロリンマゼール指揮ベルリン放送交響楽団によるヘンデルの「王宮の花火」です。ヘンデルの音楽は、華やいでいて心が浮き立つ音楽です。
1685年、バッハと同じ年に生まれたヘンデルは、バッハが音楽の父と呼ばれるのに対して、音楽の母と呼ばれ、イギリスに移住して活躍しました。
当時のイギリス、ロンドンは、産業革命が始まり、新興市民が富を得て娯楽が要求されていました。
ヘンデルの音楽は、そんなロンドンの都会的な、華やかさ、上品さ、煌びやかさを持っています。

これから何回か、「音」に関してそうした「品位」や人々に好まれる「洗練」をテーマにお話ししていきましょう。

萩原光男