自然環境が作るステキな音 その1

今回の音楽は、現代音楽のジョン・ケージのピアノソナタです。
静かですが、聴いてみてください。

・京都二年坂を下る(心に残る音の路地)

京都の清水坂から三年坂を歩いて二年坂へ曲がり、八坂神社の裏の寧々(ネネ)の道を歩くことは、音という点で、私にとって京都の旅における大きな楽しみです。

三年坂を歩いて二年坂へ曲がると、そこにはT字路と石段の坂。突如静寂が広がり、開放感に浸ることができます。京都市街地の暗騒音(「騒音」の対象となっている音以外の騒音)は、3方が遮断されていて静寂なのです。

石段を下る私には、自分の靴音と自身の衣(キヌ)ズレの音、吐息しか聴こえず、それらの音が4〜5m幅の両側の板塀と石段からの反射音によって明快でクリアに聴こえます。あたかも小さなコンサートホールで音楽を聴いているような心地良さです。

ドイツの雑誌のオーディオの音質評価に、ラウムライヒカイトという用語があります。英語で言えばルームフィーリングとでも訳せます。リビングルームのような、それほど広くない部屋で音楽を聴く感覚のことですが、そのような音が好まれるのです。
ラウムライヒカイトの良い部屋では、反射音が有効に働き、ピアノなども生き生きとして音の粒立ちが良く、クリアで明快な音楽が聴けるのです。

二年坂の音は、あたかも優れたライムライヒカイトの部屋にいるように感じられる音空間です。しかし、ほんの数メートルも歩くと両側の土産物屋の商品に心を奪われて、音のことなど忘れてしまいます。視覚優位なのです。耳が魅力的な音を捉えても、視覚情報にすぐ心を奪われてしまいます。

石段の道はすぐに終わり、それに続く石畳みの道を200mぐらい進んで八坂神社の裏を歩き、高台寺の前の石塀の道に続きます。

そこは「寧々の道」と名付けられていて、秀吉の妻の寧々が通った道と伝えられています。夫との時間が終わり、寧々はこの道を静々と歩いたのでしょうか。

ここでは普通に京都の都市騒音が聞こえますが、土塀がそれを少しだけ遮って聴きやすくしています。さらに歩くと知恩院から哲学の道へと続きます。

この二年坂の素敵な音空間を味わえるのは、三年坂から二年坂に曲がった一瞬です。しかし、心はその瞬間を覚えています。
私は、朝の散歩には同じロケーションの路地を選んでいます。散歩道に幹線道路があり、そこを曲がると急に静寂が訪れる路地で、京都二年坂の素敵な音を思い出しながら歩くのです。

萩原光男

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